借りぐらしのアリエッティ

さて、アリエッティ
なんでも監督が若手らしくて、その監督のお手並みをご披露という意味合いもある、今回の公開だったらしい。
その点でいえばまぁ「駿が死んでも、表面上変わらぬジブリをお見せできます!」ということを証明することはできたのかもしれないと思うところはある。そこにはまぁ脱帽はする。技術的な層は厚い。それは見られたのは良かった。
(水滴の表現はおもしろかったけど。確かにああなるとは思う。)
しかし、「それだけのこと」を確認したくて、1800円を払った覚えはない。以下愚痴になるけど、要旨は「それ以外は何も見るべきものがなかった」ということです。技術披露だけならなにも劇場じゃなくてもできる。そういう意味では何も得られなかった今回のアリエッティ観賞でした。


まずまぁ、思うのは「テーマが見えてこない」ことか。
作品を通して、伝えたいテーマが見えてこないのではなく「ない」のではないか?とすら思うところ。「とりあえず多摩のほうに、こういう種族が生きてて、こう過ごしてたら面白いだろうな」ぐらいのことのみを考えて、作品作りをしたのではないのかと思う。それほどまでに思想は見えてこない。そして思想のない作品はなくてもよい。
※「身勝手な行動で小人の住処を追った人間の罪深さ」がテーマです、ってんならもっと分かりやすくしてほしかった。同様に、「異種間の友情は成立するよ」とかでも。ともかく、「見えてこない」のだ。
※わざわざ映画にするくらいなんだから、テーマぐらいあってほしいー、という自分の思いが先行しているのだろうが。


「キャラの心情が読めない」のも気持ち悪いところ。
特に人間側にこの傾向が顕著で、
「ハルさんはなぜああまで『小人を捕えたい』願望が強かったのか」
「なぜ男の子は初めて顔を合わせたところで『君たちの種族はいずれ滅びる運命なんだよ』とか言うのか」
「ミーアっていつの間に懐いたの?」
「おばあさんの小人に対するスタンスは?」
と、疑問は絶えず。特に上2名。
なんかあらかじめ決まっていたお話を滞りなく進めるために、人間側が脚本に動かされている、という感じがして、なんだか気持ち悪く感じました。なんかキャラ全般に血が通っていない印象。
あと、小人側にも。
「お父さんは家族の他に小人が居るのを知ってた風であるのに、なぜ家族には知らせていなかったのか」
とか。まぁここはあえて描かなかっただけなのかもしれませんけど。
ともかく、きちんとした「生き物」としてキャラを描いていたのかは疑問。


「設定は掘り込めていますか?」という指摘もある。
疑問に思ったのは小人の寿命とか、家の中のものが全部がお父さんないしは先祖の自前のものなのか、とかまぁそういうところ。
人間との交流はないはずなのに何故現代語を喋れるのかとか、あと「アリエッティ」ていう名前とか。日本語喋るのに英名なんかよとか。まぁいろいろ。全部が全部しっかりしてないといけないことはないんですけど、ファジーにもほどがある。
その辺が人間を描けていないことにもつながってくるのかもしれませんが。


まぁとりあえず、以上の理由で、ダメだったな、と感じます。絵はきれいだった。それだけ。